天海祐希が、吹き替えの声優を演じることでも話題になっている、「マイティ・ソー バトルロイヤル」(原題は、「ソー ラグナロク:Thor:Ragnarok」)。
日本語のタイトルがダサいだのと、ネガティブな話題にも事欠かないが、この秋注目の作品だ。
シリーズでは三作目に当たる今作品、これまでとは180度違うストーリーの展開が期待される。
中でも、敵役にケイト・ブランシェットを迎え、神々の戦いに一層拍車がかかる。
しかも、アベンジャーズでは争うことしかなかったソーとハルクの間に、少しばかりの友情が芽生えるのも見ものである。
アベンジャーズシリーズがいささかマンネリ化しているところへ、地球を離れてストーリーを紡いだアイデアが、また功を奏したようだ。
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今回は、「マイティ・ソー バトルロワイヤル」を見ながら、ヘラに扮するケイト・ブランシェットにスポットを当ててみた。
ストーリーが一新!
もちろん、全てにおいて一新されたわけではない。
従来のストーリーにつなげつつ、視聴者が想像すらしなかったであろうフレーバーを加味している。
マーベルコミックスでは、「マイティ・ソー バトルロイヤル」に相当する部分はなく、唯一「プラネット・ハルク(Planet Hulk)」がこれに近い。
余談だが、コミックスでは、プラネット・ハルクでサカー星(Sakaar)の王になったハルクには、実は奥さんと子供がいる。
本作では登場せず、今後のマーベルユニバースにも出て来るかどうかは分からない。
ただ、こちらはこちらでアニメになっており、特に長男(?)に当たるスカー(Skaar)は、単独スピンオフのヒーローだ。
ちなみに、奥さんの名前はカイエラ(Caiera)、次男(?)の名前はヒロ・カラ(Hiro-Kala)。
ヒロ・カラは、スカーとは異なり悪に心を奪われ、母(カイエラ)の持つ力、オールドパワーに魅せられる。
しかも、コミックスでは、ハルクはサカー星に連れ去られたのではなく、彼の凶暴性を危惧したアベンジャーズ(コミックスではイルミナティー)によって、ロケットに閉じ込められて地球から追い出されたのだ。
ところが、ロケットの故障によってサカー星に不時着し、弱っていたところを従属ディスク(意識をコントロールするデバイス)を付けられて、バトルロイヤルに無理やり参加させられる。
その後は、対戦相手を次々に下し、彼を崇拝する者たちの手も借りて、サカー星の元王を倒して新しい王となった。
「マイティ・ソー バトルロイヤル」でソーが来たのは、ハルクが星を平定した直後となるようだ。
映画のストーリーには無関係だが、こんな裏話ならいかがだろうか。
いかんせん、映画ではキレイな場面しか扱わないので、いささか興ざめすることもあるのだが、その裏側を垣間見ると俄然面白みが湧いてくる。
「ハルクに子供?」、「ブルース・バナーはどうなった?」、「ハルクは変身したままか?」などなど、疑問は尽きることがない。
ヘラを演じるケイト・ブランシェット
「なぜ、ハルクとソーが戦うのか?」、「なぜ、ソーは髪の毛を切ったのか?」、
「なぜ、ハルクもソーと似たような髪型なのか?」、「ロキはどうして捕まった?」。
この映画には、それは多くの疑問が付いて回る。
だが、その答えを探すのは、実際に映画を見れば済むことであり、それは後のお楽しみにしておこう。
それよりも、気になるのは敵対する相手役、最強の敵、ヘラだ。
そもそも、この「ソー(Thor)」シリーズは、北欧神話をベースに作られているので、オーディンやアズガード、それにロキなど、神話の神々がそのまま登場する。
だが、ヘラだけは、元々ギリシャ神の一人で、ゼウスの妻であり、美と若さの女神である。
それが、「ソー」シリーズでは、死を司る神としてニフルへイム(Niflheime)とヘル(Hel)を治めている。
ギリシャ神話のヘラも、必ずしも優しい女神ではないが、こちらはアズガードの神々でさえ恐れる悪の化身。
コミックスでは、かなり奔放で、お色気むんむんのキャラクターに描かれているが、映画のヘラはソー以上の力を持つ絶対神となっている。
話変わって、ヘラを演じるケイト・ブランシェットだが、この人は押しも押されもせぬオスカー女優。
主演女優と助演女優の、二度にも渡る賞に輝いた、「超」の字が付くビッグスターだ。
ただの魔女キャラなら、シガニー・ウィーバーやミッシェル・ファイファー辺りでもよかったのだろうが、最強の敵ともなると彼女しかいなかった。
演技には文句の付けどころもなく、そのオーラ(この表現はあまり好きではない)にいたっては、あのアンソニー・ホプキンス(オーディン役)すらたじたじのバカでかさがある。
最近の、すぐに色気を売りにする女優とは違い、女性らしさと知的さを兼ね備えた、聡明で限りない奥ゆかしさを持つアクトレスだ。
ヘラのコスチュームはかなりセクシーな印象だが、それにも完璧にフィットするような体を作って臨んでいる。
まさに、プロ中のプロ、彼女以外にヘラを演じられる役者は見当たらなかったのだろう。
もともと、金髪にブルーの瞳は、美しいが近寄り難い冷たさも醸し出す。
「シンデレラ」で見せたママ母の役では、視聴者の怒りを買うほどに憎かった。
しかし、そんな演技をできるのも、常に人生を俯瞰し、いついかなる時も遥か高次元に精神を置いているからに他ならない。
ぽっと出のアカデミー受賞女優とは違い、どんな役を演じても、視聴者を安心させる説得力がある。
そんな彼女が最強最悪の神を演じるのだから、それは恐ろしいと言うものだ。
妖艶さと凶悪さを秘めた女神、それがケイト・ブランシェット演じるヘラなのだ。
またまた余談になるが、コミックスでは、ヘラはロキの娘という設定。
今作で登場するロキは、いわばこのロキの化身となる。
ラグナロク(Ragnarok)とは、神々の終末を意味し、またそれは、神々に対する存在(神話では巨人)との生死を賭けた戦いを意味する。
現在のロキは、前回のラグナロクで命を落とした、旧ロキの生まれ変わりと言っていい。
ケイト・ブランシェットは、この映画の裏に横たわる、壮大なストーリーを熟知しながら演技を行ったと見える。
そして、ロキがなぜ捕まっていたのか、またなぜソーと共に戦うのかも、少し分かるような気がする。
いずれにせよ、「マイティ・ソー バトルロイヤル」では、ケイト・ブランシェットから片時も目が離せない。
終わりに
ケイト・ブランシェットが登場すると、他の女優の気配がかすむ。
それだけ存在感が大きいからだが、それにしても、新しいキャラとして参加した、テッサ・トンプソンが気の毒だ。
せっかくのチャンスでも、まず彼女が印象に残ることはない。
彼女の役どころはバルキリー(Valkyrie:神話ではワルキューレ。武装女神とされる)、結構人気のキャラクターで、後々ソーと恋中になる(ほんの一時)。
とは言え、今作ではヘラに押されて目立たないだろうな。
おそらく、次回作にも登場するので、今後の活躍に期待しよう。
「マイティ・ソー バトルロイヤル」は、11月3日(金)全国公開!
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