ワセリンの用途に合わせた最も効果のある使い方 控えめにご紹介
2014年の春、ある生物学的な大発見で一躍脚光を浴びた日本の化学研究機関を覚えていますか?
日本だけには留まらず、世界中の科学者を巻き込んだ一大論争を引き起こしました。
原因となったのは、一人の女性研究員が発見したSTAP細胞と呼ばれる万能細胞の有無であり、それをバックアップしたのが当の理化学研究所(後、理研と記述)でした。
しかしながら、STAP細胞の存在が否定されたばかりではなく、発見したとする研究員の博士号が剥奪されたり、挙句にはその世界から抹消されるといった結果にまで発展してしまいました。
そんな世間を騒がせた理研が、またまたある発見をしました。
今回は、ワセリンを使ったアトピー性皮膚炎の予防だそうです。
その信憑性はともかくとして、一般的に知られているワセリンの、最も効果的な使用方法を見てみましょう。

<引用元:http://www.vaseline.co.id/product/petroleum-jelly/jelly-original.html>
目次
ワセリンって何?
そもそも、ワセリンとはどんな物でしょうか?
私達がよく見かけるのは、ボクシングの試合中継で、ラウンドごとのインターバルで選手がコーナーに帰ってきた時に、トレーナーがボクサーの顔に塗りたくっている、べっとりコテコテしたあれです。
一見すればグリースのようにも思える、粘着性のあるドロドロです。
おおよその感じは分かったので、さらに詳しく見てみましょう。
ワセリンの成分
ワセリンは、石油を原料として作られる油脂の一種です。
キャンドルの多くがパラフィンで作られていますが、ワセリンの主成分はこのパラフィンです。
ワセリンの由来
ワセリンは、英語ではVaselineと綴ります。
そして、当時これを読む際に、ワセリンと発音したようです。
ヴァセリンとワセリンを全く違う物と思い込んでいる人がいるようですが、どちらも同じ物を指しています。
ただ、ヴァセリン(Vaseline)は、あるアメリカの会社(ユニリーバ)の商標登録された製品の名前です。
もともは、石油ゼリー(ペトロリウム・ジェリー、petroleum jelly)と呼ばれる物質をVaselineと名前を付けて販売したのが、いつの間にか一般化したのです。
ワセリンの種類
ワセリンには、実はいくつかの種類があります。
1. 黄色ワセリン
最近はほとんど見かけません。十分に精製されていない不純物を多く含んだワセリンです。その色がくすんだ黄色に見えるので、このように呼ばれています。発売当初はこれが主でした。
2. 白色ワセリン
一般的に知られているワセリンです。十分に蒸留精製されていて、多くの不純物が取り除かれています。医療用や化粧品にも多く使われています
3. プロペト
白色ワセリンをさらに精製したスグレモノです。医療用(眼科用にも使われる)にもなるほど安全性が高く、医薬品として処方もされます。
4. サンホワイト
こちらも白色ワセリンの一つですが、ワセリンの中では最高品質の製品です。しかし、これは日興リカ株式会社の商品の一つです。値段も高く、50グラムで1000円以上します。
ワセリンの使い方
ワセリンは、元を正せば、ドリル(石油採掘用の)の動きをスムースにするために作られた石油製品でした。
ところが、あまりにもトラブルが多いために使うのを断念されてしまいます。
そこで、代わりに体の特定の場所に塗ったところが(最初は火傷をした時に塗っていました)、ウソのように調子が良くなったので、その後は軟膏として用いられるようになりました。
ワセリンとして販売されて以来、その用途は多岐に渡ります。
特に、白ワセリンの精度が高くなるに連れて、化粧品としては勿論、医療用のワセリンも登場します。
では次に、もっともよく使われる方法を見てみましょう。
1. 火傷に
ワセリンが売り出された当初から、この商品は火傷の治療に使われることが多かったようです。
重度の火傷では使用せず、もっぱら軽度の火傷に使います。
使い方は、火傷の部分を水で冷やした後、少し多めのワセリンを幹部にむらなく塗布します。
塗り込まずに、そっと載せてゆく感じです。
塗り終えたら、その上にラップをかけて様子を見ます。
2. 唇のカサつきに
唇の皮がカサカサでひび割れてきた時などは、このワセリンが役に立ちます。
Vaselineからもリップクリームが販売されていますが、自宅でも似たようなものは作れます。
例えば、多くの女性が好きになる、ワセリンとハチミツのパックがあります。
ワセリンとハチミツの唇パックのやり方
1. レンジでチンした蒸しタオルで唇を温める。
2. ワセリンとハチミツを同量混ぜて原液を作る。
3. 原液を唇に塗り、その上をラップで覆う(5~10分)。
4. ラップを外して原液を濡れたタオルで拭き取る。
3. 花粉症のケアに
花粉症は、花粉が粘膜に付くことで起こります。
そこで、体がアレルギー反応を起こす前に、ワセリンで花粉をシャッタアウトします。
やり方はとても簡単で、ワセリンを指先に付けて鼻の内側に塗るだけです。
ただし、一度塗っただけでは防ぎ切れないことがあるので、一日に数回塗る必要があります。
まつ毛やまぶたに薄く伸ばすことでも、花粉が目に入る可能性を抑えてくれます。
4. 赤ちゃんのおむつかぶれに
生まれて間もない赤ちゃんは、皮脂の分泌が盛んです。
常に清潔にしておかないと、すぐにかぶれたり湿疹が出たりします。
そこで、きれいに体を洗った後は、乾燥し過ぎないように上質のワセリンを薄く塗るのが有効な手段となります。
ただし、いくらワセリンの品質が良くなったからといっても、石油製品には違いありません。
赤ちゃんの肌には先に述べたサンホワイトなどがおススメですが、塗り過ぎには注意が必要です。
5. アトピー性皮膚炎に
冒頭でもお話したように、アトピーにも効果があると言われています。
以下は、メディアに掲載された、理研による研究結果です。
アトピー性皮膚炎を自然発症するマウスを作製し、病気の原因となる遺伝子変異を調べたところ、細胞の増殖や分化に必要なたんぱく質「サイトカイン」を伝達する「JAK1」分子の遺伝子配列に突然変異が生じていることを発見した。JAK1の異常が角質をはがす酵素「プロテアーゼ」にも影響し、角質による保湿効果が低下することで、アトピー性皮膚炎を招く――というメカニズムを解明した。
こうしたマウスの表皮に、JAK1の働きを阻害する薬剤や、保湿効果を高めるワセリンを塗布したところ、発症を遅延・予防できた。発症前に皮膚バリアの破壊を防ぎ、角質の適切な新陳代謝を促すことがアトピーの予防につながることが分かった。
STAP細胞の一件はともかく、生化学の分野で大きく貢献してきた理研の発表です。
今後、さらにワセリンのアトピーに対する効果が解明されることでしょう。
使い方は、他の場合と同じです。
適量を手に取り、乾燥が激しい部分に優しく塗布します。
ただし、これも長く放置しておくと良くないので、酸化を防ぐためにもこまめに手入れすることが推奨されます。
6. 止血に
上ではボクサーの話をしましたが、傷の一時的な止血にもワセリンは効果を発揮します。
ただ、ボクシングの試合では、カットマンと呼ばれる瞬時にして傷の治療(腫れを取るのと止血だけ)を行う専門家がいます。
彼らがワセリンを使って止血するからといって、一般家庭でも同じようには行きません。
それほど深くない傷でも血がたくさん出るようなら、一時的にワセリンで傷口を塞ぐことは出来ます。
その場合は、血をきれいに拭ってから塗布するようにして下さい。
血が吹き出ているときは、ワセリンを無理に塗っても止まりません。
こぼれ話
「ワセリンをまぶたに塗ったらまつ毛が伸びた!」なんて話を聞きますが、あまり信用しないようにしましょうね。
もしまつ毛を伸ばしたいなら、ココナッツオイルとアーモンドオイルを混ぜたものを、マスカラを塗るブラシなどでまつげの根元に少量塗るのがおススメです。
ワセリンを塗ってまつげが伸びるなら、マスカラだけでも伸びるはずです。
なぜって、原料はほぼ同じですから。
ワセリンをダイエットに利用?? 結論からすると、無理です! 汗は汗でしかなく、ワセリンを塗って発汗を良くするのは可能ですが、痩せません。
終わりに
以上が、ワセリンの用途に合わせた使い方です。
多くの場合は、肌を極度の乾燥から保護するときに使います。
しかしながら、ワセリンを利用できるのは、一時的な急場しのぎの場合が多く、その後にはもっと適した処置が必要になります。
ワセリンが発売された当初は、いかにもミラクル商品として持て囃された感がありましたが、それは昔(19世紀~20世紀前半)の話です。
今や、その症状に応じた薬品が開発されているので、ワセリンに対する過剰な期待は禁物です。
いくら無害に近いとは言え、石油精製品が肉体に及ぼす影響を見過ごすわけにはいきません。
飽くまでも、短期間での使用を心がけるのが良さそうです。